織楽浅野さん インタビュー

織楽浅野 浅野裕尚氏織の世界

日時6月13日(金)~6月16日(月) 
場所 青山 ゑり華 浅野裕尚氏ご来場
6月14日(土)~6月15日(日)

花岡(以下花)こんにちは、今日はお時間取って頂いてありがとうございます。
浅野(以下浅)ようこそ、遠方から。
私の織楽さんの帯との出会いは強烈でした。
今からもう二十五年ほど前に、問屋さんで丸や三角だけの袋帯に出会いました。
すごくスッキリしていてお洒落。
唐織などの豪華な帯全盛の時に、これはビックリしました。
しかも高かった!
頑張って仕入れて、自分で持ち回って販売しました。
おこがましいけど一歩先を行く、世間についてきてもらうような物創りをしています。
自分は主流じゃない。
どちらかと言えばすきま狙い。
ある一つの分野の中でピカッと光る物を創っていきたいと思っていました。
あの頃は袋帯が中心でしたね。
最近は名古屋帯の割合が袋帯を越えたそうですね。
常に名古屋帯を作ってとお願いしていた私には嬉しい限りです。
私も変わったし、時代も変わったと思います。
でも寸法が名古屋帯になりましたが、やっていることはなんら変わらない。
名古屋やからと言って何も落とさない、品質もそのまま。
その中で最大限いい物を作るというスタンスは守っています。
値段は当時よりもむしろお安くなりましたね。(笑)

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◆陰翳礼讃
ゑり華が求めるのは、普段何気なく着られる着物と帯。
それでいて人に負けない、さりげないけど良いものを着ていると分かるもの。
浅野さんの帯は他の帯とどこが決定的に違うのかと言うと、着姿が素敵、格好いいんです。
似たような帯は有っても違う。ご自身はどうお考えですか?
じつは僕の物創りの方法がすごく変わったのは、谷崎潤一郎の「陰翳礼讃」なんですよ。
物の美しさは物そのものにあるのではなく、物と物とが生み出す「あや」にあると言うんです。
ここにある湯飲み、この湯飲みは宙に浮いているわけではなく、机があって茶托があって湯飲みがある。
これらから生じる関わりが美しさを生む。
これって着物と帯も同じで、着物が百点、帯も百点、合わせて二百点になるかと言うとならない。
たとえば控え目に着物が三十点帯が三十点でも合わせると百点になるような組み合わせの妙と言う物が必ずある。
着物は必ずコーディネートが要ります。
洋服はワンピースやドレスの場合ゼロではないが少ない。
着物は最初から組み合わせが大前提やから、そこを軽視してはいけないと思っています。
着物そのものも変化しました。
ここ数年着物も帯もモノトーンが多い。
そういう合わせ方をして人気を博しているスタイリストもいらっしゃる。
でも今後の流れは「きれい」に行くと思っています。
ようやくゑり華の時代が来ると。(笑)
実は私もキーワードはきれいなんですよ。
うちのは地味でも表面はきれいなんです。(笑)
昔はこの業界、派手と地味しかなかった。これ派手、これ地味。この2つだけ。
花岡さんが持ってきた御召。(ゑり華の定番、中むらの御召)
これ見てもわかるけど透明感が出てきている。濃い地でもきれいなんですね。
今日は私の御召の認識が新たになりました。
また最近の着物は帯が映える着物が多くなりました。
着物に柄物が減って無地が非常に多い、それで帯のウエイトが高くなった。
そういった意味でも着物姿がいいね!と言われるのは帯の責任大という気がします。

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◆コンセプト
浅野さんの物創りで大切にしていることは?
まず織る側が織を楽しんでいないと駄目。
あと時代性・・・同時代性。
伝統的でありながら着物はあくまでファッションです。
着物と帯と女性の一体感で生じるプラスαが「あや」。
だから僕の作る帯は装飾的ではありません。デコラティブではない。
ではシンプルですか?っていうと、シンプルは単調であったり単純という意味ですが、それも駄目。
それでは何が必要かと言った時に僕は「奥行き」という言葉に突き当たります。
それは物の持つ表情。それはデザインを越えたところにあるんです。それはクオリティーに繋がります。
上質って大切ですね。
厚みを感じさせますね。
「きれい」・「上質」・「奥行き」・互いに生み出す「あや」と「同時代生」のミックス感。この辺りのバランスを大切しています。
だからリピーターが多い。
嬉しいですね、僕がやっていることが、間違っていないという裏付けになります。
常にトップを走り続ける浅野さんですが、特に気をつけていることってありますか?
鮮度と方向性。いくら頑張っても方向性が違うとアウトですしね。
そういう意味でも方向性を確かめられる今回の企画は有り難いです。
そう言って頂くと嬉しいです、本日は長時間に亘ってありがとうございました。

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織楽浅野 浅野裕尚氏織の世界
日時6月13日(金)~6月16日(月) 
場所 青山 ゑり華 浅野裕尚氏ご来場
6月14日(土)~6月15日(日)

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